コウラのアメリカ留学生活 ~子育て、英語教育、アイスホッケー、文化の違い、株~

子育てやアメリカ生活などを通して感じたことの雑記。子育て、英語教育、アイスホッケー、日本と米国の文化の違い、株など。

英語学習法について(その3)英語の型

コウラです。

 

前回は英語がスポーツであると書きました。そして、英語の各技能(読む、聞く、書く、話す)を向上させる方法にもスポーツとの類似点があると。

 

では、各技能はどのように向上させるのでしょうか。野球の「打つ」の場合、まず素振りがあります。何度も何度も素振りをすることによって正しいスイングの「型」を体に染み込ませます(同時に、打つのに必要な筋力も鍛えています)。これと同様に、例えば英語の「書く」の場合、英作文があります。多くの英作文をこなし、正しい英語の使い方を身につけることによって、英語にもある「型」を自分のものにします(同時に、知らない単語があればそれを覚えています)。私は、スポーツにおいても英語においても、各技能を向上させるためには各技能の型を身につけることが必須だと考えています。

私は勝手に「型」と呼んでいますが、これは私にとって英語学習を語る上で非常に重要な考え方です。

 

柔道であれば正しい背負い投げの「型」があります。練習で正しい背負い投げの型を身につければ、本番でも正しい背負い投げができます。

実際は相手が防御するのでそう簡単にはいかないでしょうが、ここではシンプルに考えてください。

英語の場合は、例えば I like ~という文章が1つの(最も基本的な)「型」です。これを身につけておけば、実生活でWhich animals do you like?と聞かれたときにI like a dog.または I like a cat. と返答することができます。I like ~. を身につけておけば、~の部分に適当な単語を入れることで「私は~が好きです」と表現できるようになります。同時に、相手がI like vegetables. と言ってきた場合はこの人は野菜が好きなんだなと即座に理解することができるようになります。

当たり前だと思うでしょうが、私は英語の4技能の向上、特に「聞く」「話す」の向上にはこの「型」をより多く身につけることが重要だと考えています。

 

この型の重要性をよりよく理解するために、もう2つ例を用意します。

足を怪我した人などに対して、医者が「あなたは数週間以内には歩けるようになります」と言う場合、You will be able to walk in a couple of weeks. となります。ここではYou will be able to ~と in a couple of weeks が「型」です。

型を身につけていなかったときの私は、まず「歩ける」だから you can walk か...?いや、未来形だからwillが先にくるから、canじゃなくて will be able to じゃないとだめだな...。「以内」ってどう言うんだっけ?ああそうか、"in"か。「数週間」は…"a couple of weeks"だな。などと数秒間考えて、先ほどの文を導いていました。これでも英作文としては全く問題ありませんが、会話となると数秒間のタイムラグは円滑なコミュニケーションの弊害になります。

そこで、You will be able to ~とin a couple of weeksという型を身に着けておけば、タイムラグなく即座に先ほどの文章を思いつくことができます。ここで、「型を身につける」というのは、いついかなるときでも即座に口から出せるようにするということです。泥酔して意識が朦朧としているときでも、盲腸でお腹が猛烈に痛いときでもです。

 

型を身につける重要性は、構文が複雑になればなるほど増してきます。たとえば If I had known the content of the exam, I would have passed it. という仮定法過去完了の文章について、英作文では簡単に書けても口からすらすらと出てくる方は多くないのではないでしょうか。ここでは、"If I had known ~, I would have p.p."という部分を「型」として身につけます。この型を身につけておけば、「もし~を知っていれば、~だっただろうに。」という文章を簡単に口から出せるようになります。また、逆に誰かがこの型を使った文章を言ったときに、即座に理解することができます。

 

英語のコミュニケーションは、このような「型」をいくつも駆使して行うのです。それはあたかも野球選手が守備時に正しい捕球の「型」、スローイングの「型」を流れるように使うことや柔道選手が正しい足払いの「型」、背負い投げの「型」、防御の「型」を連続的に使うことと同じです。そして、これらのスポーツ選手が正しい「型」を習得するために血のにじむような努力を続けることと同様に、英語学習者は正しい英語の「型」を努力して身につけなければならないのです。

 

では、英語の型の重要性を説明したところで、英語の各技能ごとの型について説明します。スポーツにおいては、各技能の型はその技能のためのみに存在します。例えば、野球選手の正しい捕球の型は守備の技能にのみ必要なものです。しかし、幸運なことに英語の型は4つの技能すべてに使うことができます。例えば、上記の If I had known ~, I would have p.p. を身に着けておけば、読む、聞く、書く、話すのすべての技能に使うことができます。この型を身につける重要性を、各技能ごとに説明します。

  • 読む:英文を読む上で目標となるのは、より早くより正確に読むことです。型を身につけると、この目標の達成が容易になります。例えば、仮定法を習いたての高校生が長文を読んでいる際に、仮定法過去完了の文章があると読解スピードが遅くなることは想像に難くありません。しかし、この型を身につけておけば、文章中に If I had known ~, I would have p.p. という文章があったとしても読解スピードは落ちることがなくなります。もちろん、型を身につけていなくても文法事項として知っていれば読んで理解することはできます。ここで重要なのは、型を身に着けていない人は、身につけている人よりも読解スピードが格段に落ちるということです。
  • 聞く:英文のリスニングについても上記と同様です。もし相手が If I had known ~, I would have p.p. としゃべったら、型を身につけていない人では一瞬理解ができずに固まる可能性がありますが、型を身につけていれば固まることなく続きを聞くことができます。ネイティブの話を聞いているときに思考が一瞬固まることは致命的です。ネイティブは話すのが早いので、固まっているうちに次の文章まで言われてしまい、続きを理解できなくなってしまうからです。
  • 書く:これも「読む」のときと上記と同様です。自分が If I had known ~, I would have p.p. という文章を書きたい場合は、型を身につけておけばすらすらと書けますが、身につけていない場合は記述のスピードが落ちるということです。これは普段ならばそこまで問題にはなりませんが、時間制限のある中で英文を書く際などには若干問題となるでしょう。
  • 話す:これについては、ここまで上記に書いてきているのでもうお分かりでしょうが、型がその真価を最も発揮する技能です。型があるかないかでコミュニケーションの円滑さに雲泥の差ができます。もちろん、型を身につけていなくとも、その場で考えて口にすることはできますが、考えている時点でしゃべるのに時間がかかってしまいます。また、考えたことを口に出す際にも、たどたどしくて流暢な英語ではないことが多いでしょう。しかも、文法などに自信がない場合、はっきりとしゃべることができずにボソボソとした自信なさげなしゃべり方になってしまう可能性すらあります。上で述べたとおり、「型を身につける」とは「いついかなるときでも即座に口から出せるようにする」ことなので、型を身につけておけばすらすらと流暢な英語を話すことができます。

このように、型は各技能で使うことができ、各技能においてメリットがあるものなのです。

 

それでは、英語でコミュニケーションするためにはあらゆる英語表現を型として身につけておく必要があるということなのでしょうか。もちろん多くの型を身につけておくに越したことはありません。しかし、それは多くの英語学習者にとって時間的に厳しいでしょう。そのため、まずは英作文の例文集などを買い、掲載されている文章をすべて型として身につけることがよいでしょう。おそらく、これだけで話すことと書くことについてはあまり苦労することはなくなるでしょう。

数百文の英文を身につけるだけで「話す」「書く」に苦労しなくなるのであれば、かなりお得ですよね。

 

しかし、聞くことにはまだ苦労することがあると思います。それはなぜか。単純に言えば、聞くためには英語の音を正確に聞き取る力が必要だからです。

これについては、次回以降に詳細に説明します。なお、前回説明したとおり、これまで書いてきたことは文法力、単語力、英語の体力があることが大前提です。

 

次回からは、英語の4技能について、型の考え方にも触れつつ、それぞれどのように伸ばしていくべきかという勉強法について書いていきます。